3分で読める!「落語に見る江戸風俗」
発行周期:週刊(購読無料)(マガジンID:0000107654)
内容説明:
日本再発見!チョイト小粋なダイジェスト落語と
  江戸のオモシロいお話しを雑談ふうに語ります。


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━━ら━く━ご━と━お━え━ど━の━━━━━━━━━━━━━━━━━

 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

   平成拾漆乙酉年弥生朔日 其の参拾肆號 (2005/03/01 No34)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

 「早く人間になりた〜い!」
 昔々、そんなテレビマンガがあったとか・・・

●元犬

 白犬は人間に近い、なんて事を申しますが、蔵前の八幡様の境内に、一匹
の白犬がおりまして、参詣の人が「シロや、今度生まれてくる時は人間にな
るんだよ。」なんて言うので、犬も考えまして、なんとか現世で人間になり
たいものだと、八幡様に三、七、二十一日の間、裸足参り。もっとも、下駄
を履いている犬ってのはおりませんが・・・満願の日になりますと、一陣の
風と共に、体の毛がすっかり抜けまして、人間になれました。

シロ「人間になれたよ、だけど裸じゃ困ったな。納め手ぬぐいを腰へ巻いて。
  向こうから、口入れ屋(職業斡旋業)の旦那が来た。旦那、今日は。」
旦那「わっ、なんだい裸で、お前さんは。」
シ「かわいがっていただいたシロですが、八幡様に願を掛けまして、人間に
 なれました。どうか、奉公口を世話してください。」
旦「へぇ、お前さんは、あのシロかい。裸じゃまずいから、あたしのこの羽
 織を着て、家までお出で。さあ、ここがあたしの家だ、おっと、上がっち
 ゃダメだよ!裸足なんだから、雑巾で足を拭いて、雑巾をくわえて振り回
 すんじゃない!汚した廊下を雑巾で拭くんだ・・雑巾がけが上手いねぇ、
 ええ、四つ足の方が馴れてる?汚れた桶の水を飲むんじゃない!お腹が空
 いたろう、ご飯を食べなさい。なぜ、お尻を振るんだ!食べたら着物を着
 なさい、ふんどしを首に巻くんじゃない!何?どっか連れてけ?ちゃんと
 着物を着るんだ。」

 口入れ屋の旦那の紹介で、物持ちのご隠居さんの家の奉公人になることに
なり、旦那に連れられて先方へ。

旦「お前さん、よくそうやって、ちょびちょび小便が出るね。ええ?あそこ
 は角ですから?犬の癖は早く忘れなさい。小便した後の臭いを嗅ぐんじゃ
 ない!これから行くご隠居さんの家は、ご隠居さんと、おもとさんと言う
 女中さん、お前が行けば三人暮らしだ。さあ、ついた、ここの家だ。ご隠
 居さん、頼まれていた男の奉公人を連れてまいりました。あ、今、玄関の
 式台に顎を乗せて寝ている男です。こっちへ来て挨拶をしなさい。では、
 私は用があるので失礼します。」

隠居「こっちへ来なさい、家でいろいろ雑用をしてもらいますから。ところ
  でお前さん、名前は何ってんだい?」
シ「シロってんです。」
隠「白太郎?白吉?白助?」
シ「いえ、ただ、シロってんです。」
隠「忠四郎?良い名前だ。おとっつぁん、おっかさんはご健在かい?」
シ「雄は、どれだか良く分からないんで、伊勢屋のポチに鼻が似てるんで、
 あれじゃないかと。雌は、様子の良いカメ(洋犬)について行っちゃいま
 した。」
隠「何を言っているんだ?お茶でも入れよう。お前さんの後ろで、鉄瓶がチ
 ンチン言っているだろ。」
シ「チンチンですか?稽古しました、こんなもんで!(チンチンをする)」
隠「何をしているんだ。お茶を焙じるから、その焙炉(ほいろ)を取りな。」
シ「吠えろ?うー、わんわんわん!」
隠「気味が悪いね、この人は。おーい、おもとや、おもとはおらんか?もと
 は居ぬ(いぬ)か?」
シ「へぇ、今朝ほど人間になりました。」



●能書き

 仏教の輪廻転生に元を発すると考えられる噺です。動物が人間になり、恩
返しや敵討ちをすると言ったストーリーは民話にも多く見受けられます。

 落語家さんによって、口入れ屋の旦那が、シロが犬だった事を知っている
演出と、知らないで噺を進める演出があります。私は、旦那が知らないのは
不自然だと思い、知っている方の演出でお届けしました。

 今回は、江戸の犬事情についてお話しします。江戸で「犬」と言って真っ
先に思いつくのが、五代将軍・綱吉(1646〜1709・将軍在職1680〜1709)
の出した「生類哀れみの令」。綱吉は三十八歳で継嗣を失い、その後も継嗣
に恵まれませんでした。心配した綱吉の母・桂昌院(けいしょういん)が、
隆光(りゅうこう)と言う僧侶に相談したところ、過去の殺生の報いである
から、殺生をせず、綱吉は戌年生まれであるから、特に犬を大事にしろ、と
告げられます。マザコンであった綱吉は、桂昌院に言われるまま、貞享四年
(1687)に生類哀れみの令を発し、綱吉の死まで二十年あまり、度々念押しの
ようにお触れが出ました。

 犬を殺したり傷つけると死刑・流罪、その他の鳥獣も猫や鼠を傷つけて入
牢。鷹狩りが禁止、釣り船が禁止、蛇使いなどの動物を使った見せ物が禁止。
家庭で飼われていた金魚は、藤沢遊行寺(ゆぎょうじ)の池に放たれました。

 元禄八年(1695)には、江戸郊外中野の地に二百九十棟の小屋、二百九十五
カ所の日よけ場、四百五十九カ所の子犬養育所を有する、面積二十九万坪と
言う、上野動物園より大きい野犬収容所が作られ、江戸で収容された犬たち
は、中野の収容所で飼育されます。収容所は最高時四万二千匹の犬を収容し、
それに要した費用が九万八千両もかかり、江戸庶民や近郊農民にもその費用
負担が強いられました。

 しかし、狭い小屋に閉じ込められた犬たちは、衛生状態も悪く、運動不足、
ストレス、犬同士の喧嘩などで、保護の名の下に次々に死んでいきました。
このため、江戸の市中から野良犬の数が大幅に少なくなり、それまで「吠え
るもの、恐いもの、くいつくもの」だった犬も、ペットとしての地位を得ら
れるようになります。特に狆は疱瘡除けになると言われ、江戸の有閑マダム
の間で、狆を飼うのがブームになったり、庭付き邸宅の番犬として飼われた
り、お大名や裕福な旦那の中には、「鹿のように大きい」と庶民を驚かせた、
高価な狩猟犬(西洋犬)を飼う人も現れます。

 綱吉は、自分の死後も法令を守るよう遺言しますが、六代将軍・家宣は遺
言を無視、法令を廃止します。中野の収容所は長く放置されていましたが、
八代将軍・吉宗により、享保二十年(1735)に桃園に造営されました。そのた
め、現・JR中野駅周辺には、桃園小学校、桃園第二小学校、桃園第三小学
校、桃園幼稚園などがある、桃園地域と言われるエリアがあります。



●跋

 前回の江戸時代クイズ其の拾の答です。江戸で流行っていたシャレ言葉
「八歳の子供」とは、次のどれをシャレて言ったものでしょうか?
壱 ゴミ溜めのふた 弐 すずり箱のふた 参 鍋のふた

 正解は、壱のゴミ溜めのふた でした。江戸の年齢の数え方は、04/10/11
子ほめの回でお話ししたとおり、年が明けると一歳年をとる「数え年」です。
八歳の子供は、年が明けると九歳になるのです。ですから、八歳の子供もゴ
ミ溜めのふたも、どちらも「明けると(開けると)九歳(くさい・臭い)」
と言うシャレです。

 さて、私が、このメルマガの戯作者(ライター)になって、第三十四号で
す。私の前任の筆者さんが、このメルマガを三十三回書いた後を受けて、私
が戯作者になりましたので、前号まで前任の筆者さんに敬意を払って、冒頭
にリニューアルの文字を冠しておりましたが、今号からは、私の書いた数の
方が多くなりましたので、「名実ともに私が書いているメルマガ!」とさせ
ていただいてもよろしいんじゃないかと思い、リニューアルの文字を廃し、
ヘッダとフッタを少し変えさせていただきました。ご意見・ご感想、お待ち
しております。頂いたメールは、お断りのない限り、メルマガの中で紹介さ
せていただく場合がありますので、よろしければ、HNを。江戸時代、あこ
がれます・・・

━━は━ん━も━と━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■お話:千葉落語同好会 福々亭 笑助
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■発行元 :マンモス通信 info@manmos.tv
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